カジノに頼らない戦略も
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案が12月15日未明、国会で可決、成立した。今後、本格的なカジノの開設が目指されることになるが、日本の観光にどんな影響を及ぼすか。業界内にも賛否両論があり、見通しづらいのが実情だ。実現までには紆余曲折も予想される。
IR(Integrated Resorts)はカジノのみならず、ホテル、商業施設、ミュージアム、会議場などを一つの区域に含む統合施設をいう。シンガポールのマリーナベイサンズが成功例としてよく挙げられる。
IR整備推進法はカジノを解禁する区域を限定し、IRを作れるよう制度整備を政府に促す内容。政府は同法に1年以内をめどと明記された実施法の整備に着手することになるが、カジノ解禁のため刑法の賭博罪の例外をどう規定するかが焦点になるとの指摘もある。
カジノ開設の功罪にややスポットが当たりすぎているのではという思いもある(ある意味仕方がないが)。IRという観点からの議論がもう少しあってもいい。カジノで本当に観光客が集まるのか、カジノに頼らない戦略も必要ではないだろうか。時間はたっぷりある。「観光業界はIRについてこう考える」と主張、提言を期待したい。女性、子どもも楽しめるリゾート地となるために。
カジノ先進国の米国やマカオ、そして韓国ですら、うまくいっているのは一部に過ぎない。ラスベガスに次いで全米第2位を誇るカジノ都市、アトランティックシティは落日の観光リゾート地とまでこきおろされている。「カジノ後進国の日本が世界のカジノ都市と勝負するのは無謀」と言い切る観光関係者もいる。
ギャンブル依存症、犯罪の増加、暴力団の介在、治安悪化、青少年への悪影響…。カジノにつきまとう負のイメージを法案作成過程で完全に取り除き、日本人が、そして外国人が安心して楽しめるリゾート地を作り上げる。もちろん、地域が潤うシステムも確立する。IRができて良かったと評価されなければ、真の観光立国にはなれない。
【内井高弘】